DIARY
素晴らしい人生
来年の1月9日より日生劇場にて上演予定の舞台『黒蜥蜴』に出演させていただくことになりました。
江戸川乱歩原作の名探偵・明智小五郎シリーズより、三島由紀夫が戯曲化した極上のエンターテインメントを、デヴィッド・ルヴォーさんの演出にてご覧に入れます。
明智小五郎は井上芳雄さん、黒蜥蜴に狙われる宝石商の娘早苗を相楽樹さん、黒蜥蜴に仕えるひな夫人は朝海ひかるさん、さなえの父親である宝石商をたかお鷹さん、そして、黒蜥蜴の手下である雨宮潤一を成河さんが演じてくださいます。
お稽古に先駆けて、都内某所にて3日間のワークショップが開催されまして、お〜いお茶プレミアムティーバッグをポンッと入れたタンブラーを携えて、稽古場に向かいました。
日生劇場のような大きな劇場の舞台に立つのは初めてのことで、さらには20名を越える出演者の皆様と演劇に携わることにも慣れておらず、恐る恐る扉を開いてみると、名演出家のルヴォーさんによって、緊張している出演者ひとりひとりの心をほぐし、チームワークを形成するためのエクササイズが様々与えられ、稽古場は真剣に遊ぶ大人達の笑いに充たされました。
水を得た魚のように生き生きと、即興で表現をなさる出演者の皆さんを目の当たりにして、あまりにも豊かで、愉快で、観客になったような気分で抱腹絶倒しておりました。
達者な役者さんたちの輪の中に演劇経験の浅い私が入っては、足手まといになることは明白ですが、それでもルヴォーさんが手を差し伸べてくださり、三島由紀夫の美しくも残酷な言葉に絡め取られ、身動きができなくなりそうな心境を救っていただけました。
始まりはゆるやかに、あたたかく、間口は広く、懐深く、とはいえ、これから本番までは怒濤の台詞にさいなまれ、それを血の通ったものとするために、身もだえることになるのでしょう。
しかし、ルヴォーさんが三島由紀夫の近代能楽集の台詞から引用し、皮肉交じりにつぶやく『素晴らしい人生』という言葉を拠り所に、準備に励みたいと思います。
黒蜥蜴と明智小五郎、共に犯罪に取り憑かれ、磁石のように惹かれ合う二人のロマンチックな愛の物語をぜひ劇場にてご覧いただけましたら嬉しいです。